〈4月例会のお知らせ〉
2018年4月14日(土)午後2時より
慶應義塾大学 三田キャンパス
南校舎445教室
“It’s all one case.” —Ross Macdonaldをめぐって
若島正(京都大学名誉教授)
司会:諏訪部浩一(東京大学)
Dashiell HammettやRaymond Chandlerと並んで、我が国では俗に「ハードボイルド御三家」と呼ばれるRoss Macdonaldは、最盛期となる50年代から60年代にかけての作品7作がThe Library of Americaに2冊本で収録されるなど、すでに本国でも確固たる地位を獲得しているが、彼の真価を明らかにするような作品分析は必ずしも進んでいるとは言い難い。しかし近年、お互いに愛読者どうしであり、しかもほとんど恋人どうしのような親密さをおぼえていた、Eudora Weltyとの往復書簡集Meanwhile There Are Letters (2015)、自作について、そして文学全般について語ったロング・インタヴュー集It’s All One Case (2016)の刊行によって、再評価のきざしが現れている。本発表では、そうした近年の動向を踏まえつつ、従来のハードボイルド小説受容の枠組みでは見えてこなかったRoss Macdonaldの小説技法を明らかにすること、特に1人称の語り手である私立探偵Lew Archerの機能と、小説全体の構造について詳述することを目指す。議論の必要上、いわゆるspoilersを多く含んでいることをあらかじめご承知おき願いたい。また、本発表のもう一つの力点は、主にRoss Macdonaldについて語りながら、およそ50年近くになる、わたし個人の海外小説読書史についても語ることにある。ばらばらな興味で読んでいるさまざまな本が、次第にどういうわけか個人的な一つの回路を形成していくこと。「すべてはつながっている」というその感覚を、できるだけ多くの聴衆の方々と共有したい。
なお本発表は、Ross Macdonaldをはじめとして、主に大衆小説を中心としたアメリカ小説の広大な海原にわたしを導いた水先案内人である、故小鷹信光氏に捧げられる。
特別講演終了後、南校舎445教室
議題:活動、会計報告、委員の交代、その他
2018年度支部総会は、特別講演会場である南校舎445教室にて開催されます。
お間違いのないようお気をつけください(例年の会場である、AB会議室ではありません)。