〈4月例会のお知らせ〉
2021年4月16日(土)午後2時より
オンライン(Zoom・事前申込制)で開催いたします。
『老人と海』の翻訳を巡って
今村楯夫(東京女子大学名誉教授)
司会:中野学而(中央大学)
The Old Man and the Sea (『老人と海』)は、私の手元には4種類あります。福田恒存、小川高義、高見浩、中山義行の四人です。それぞれに訳者の作品解釈に基づき、翻訳がなされており、いずれも優れた翻訳だと思います。一方で、私の解釈と著しく異なる点もあり、このたび、私自身の解釈に基づき、新たな翻訳を試みました。当初の出版予定は昨年末でしたが、諸般の事情によって今年の4月まで延期となりました。
この新たな翻訳『老人と海』の特徴と私の視点について、お話しします。
『老人と海』には二人、主要登場人物がおります。サンティアーゴという老人とマノーリンという若者です。サンティアーゴはキューバのコヒマルという小さな漁村に住む漁師です。年齢不詳ですが、おそらく60歳台でしょう。一方、マノーリンは 最初に “a boy” と呼ばれ、年齢不詳です。実はこのマノーリンの年齢不詳が、大問題です。これまでの日本語訳では、14、5歳だろうと推定されて訳出されてきました。また私自身、『老人と海』のアニメーション映画の制作にアカデミック・アドバイザーとして加わり、ロケのためにキューバまで赴き、作品背景の助言を行い、コヒマルでサンティアーゴのモデルのイメージを持った人物に面会しました。ただし、マノーリンのモデル探しには加わりませんでした。結果として、マノーリンのイメージに沿ったモデルはアメリカの少年が採用され、原作とは大きく異なる少年が登場することになりました。
このマノーリンの年齢は実は20歳前後と考えるのが適切であろうと結論を下し、新たな翻訳を行いました。マノーリンの人物設定とそれに関わる『老人と海』の解釈が本日の講演の主たるテーマとなります。
特別講演終了後、オンライン(Zoom・事前申込制)で開催いたします。
詳細は、4月上旬頃、支部HPに記載しますのでぜひご確認ください。
議題:活動・会計報告、委員の交代、その他